

ある日、
カツオ漁師の魚太郎が乗った船が、
見かけない船に遭遇しました。
この日は不漁でみんな意気消沈していました。
「ここではカツオは釣れないよ。
北東へ50キロ行くといいよ。」と変な服装したその船の男が言いました。
そして
「ところで君たちはどんな方法で漁をするの?」と聞いてきました。
分かり切ったことを聞く変な奴と思いながらも、魚太郎は説明してやりました。
魚群を見つけるには、トリヤマや潮目などを利用すること、魚群探知器も活用し
半径1キロ以内の魚影が映ること、釣り方は一本釣りであること、
和具港を出てから2週間目であること、釣果は瞬間冷凍すること、
この頃は人手不足を補うため外国人も雇うこと、志摩の国では平安時代からカツオを税として納めていたこと、「てこね寿司」は
南洋産のカツオで作ると旨いこと等、聞かれもしないことまで話してやりました。

すると男はワハハと笑って
「時代遅れだのう」と言いました。
むっとした魚太郎は「あんたは何人?」と聞きました。
「私は未来から来た日本人だ」と答えて、「我々の世界では衛星情報で、潮の流れや温度、トリの群
れの位置などを処理し、カーナビと同様ロボットの声で漁場を教えてくれるんだ。」
そして
「一本釣りは資源を一網打尽にしなくてイイね。」
「我々も日本の伝統を引き継いでいるよ。ではさようなら。」と
言って倍くらい早い速度で、いってしまいました。
「不思議な夢だったな」と息子に向かってつぶやきながら、
「日本の誇る一本釣りを残して行かないとな。」
「なにせ賢い未来人も認めているんだからな。」と言いました。



